夕暮れの縁側で、父が麦茶を飲んでいる。
背中越しに流れる野球中継の音。
新聞をたたむ手は、昔より少し細くなった気がする。
思い返せば、口数は少なかったけれど、不思議と、あの人の言葉はいつまでも残る。
「まあ、なんとかなるよ」
困ったときも、嬉しいときも、たったそれだけ。
あの日の釣り竿、直してくれた自転車、慣れない手つきで握ってくれたおにぎり。
ぜんぶ、きっと忘れない。
6月15日。
そんな思い出の風といっしょに、玄関先に小さな箱が届く。
包みを開けて、父が少し笑う。
「オレに、花なんて・・」
目尻をほんの少しゆるめ、そっと箱を持って奥へ消えた。

アレンジメント
爽やかな色合いの花材を中心に季節のグリーンを添えたアレンジメント
花束
ナチュラルなテイストの花材を中心に季節のグリーンを添えた花束